15. お耳の誕生日おめでとう

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これは私の経験談です。続き物になっています。

たくさんの障害を持って生まれた息子。
6ヶ月の頃、「聾」であることを医者から告知された。
9.聾だと宣告される

10ヶ月の時、顔の外表奇形の手術を済ませ、一見、見た目の障害はわからなくなったので、
手術後少し落ち着いてから聾学校を紹介していただくことになった。

聴覚口話法の学校との出会い

生まれつき聞こえない赤ちゃんとの生活をどのように進めていったらよいか?

これに関してのアドバイスは早ければ早いほどいい。ということで退院間もなくこども医療センターから聾学校の乳幼児部を紹介していただいた。

赤ちゃんは生まれた時から(胎内にいるころから)お母さんの声を聞いて安心したり、家族や周りの言葉を聞きながら、言葉はもちろんのこと心の部分も育ってくるからだ。

なので、その子にあった補聴器を早い段階から着用したほうがいいと指導された。
(ということすらそれまで知らなかった。)

「ご自宅から近いところですと「聴覚口話法」の学校ですけど町田に「日本聾話学校」がありますよ。一度見学に行かれてみますか?」
ということで日本聾話学校へ見学を兼ねて相談に行った。

ここは、聴覚主導の学校で、聾学校ではあるが手話を使わずに補聴器(現在ならば人工内耳も)をフル活用し、
わずかに残された残存聴力を最大限に伸ばすという方針で、難聴児も口話によってコミュニケーションできるようになるという。

「ことば」は教えて育てるのではない。
生活の中でかわされた言葉や、本人が体験したことで生きた言葉、心と心のやり取りを通した対話をたくさん重ねていく事が大切で、
その積み重ね・繰り返しによって(話し言葉による)「ああ。言葉のコミュニケーションは楽しいなあ」と本人が感じることがまずは一歩だという。

そして(そこは、)手話は一切使わない。
なぜなら手話を与えてしまうと、難聴児の耳を開くという主旨の聴覚口話法での教育ができなくなるので。

子供が成長し、世の中に出た時、まわりに手話を使える人というのはまだまだ少数で、少しでも口話によるやり取りができたほうが良いのではないでしょうか?
というような話だった。

どちらかといえば「健聴者に障害児をあわせる、引き上げる考えかも」と今となっては思えなくもないが、
その時は「この子が口話でやりとりできるようになるならばそれは素晴らしいことだよな」と思った。

補聴器をつけて健常の子と全く同じようには話せないけど、、

楽しそうに口話で会話している幼稚部のお姉ちゃんたちが横を通った。

「ここに通うと息子もこんなふうになるのかな?」と単純に思った。

そして何よりもここの学校の持つ暖かい雰囲気とやさしそうな先生方が印象的でここにお世話になることになった。

お耳の誕生日

その聾学校の乳幼児部に入園することが決まったわけだが、まずは息子の耳に合った補聴器を合わせていただくことになった。

彼の聴力はふさがっている方の左耳(耳も奇形で片方ふさがっている)は120~130db・・・こちらはほとんど残存聴力が見いだせない数字。
開いている方の耳である右耳は平均90dbほどであった。

ちなみに障害のない人はは0~20db。

「平均」というのは、音は高い周波数から低い周波数まであり、聴力検査はそれぞれの周波数で反応を見ていくので、そのそれぞれの数値の平均。ということである。

補聴器は(今もそうだが)右耳に高度難聴用の耳かけ型のものを選んでいただいた。

補聴器はチューブでイヤーモールドへと繋がっている。

イヤーモールドというのは樹脂でできていて使う人の外耳の凹みにぴったりと合わせて作られる。
注射器のようなものを耳の穴に向けてあてられ、むにゅむにゅっとした粘土のような樹脂が出てきて、イヤーモールドの型を取る。
赤ちゃんの間はこれを嫌がったが仕方なかった。

補聴器とイヤーモールド

初めて補聴器をフィッテイングされた日、聾学校で「お耳のお誕生日おめでとう。」と祝福された。

先日youtubeの海外の映像で「初めて聞こえない赤ちゃんに補聴器をつけた時の反応」のような映像を見た。
映像の中の赤ちゃんはわかりやすい反応をしていたが、息子はその瞬間はなにかはじめて聞こえる音があったのか何かわからない感じだった。

補聴器もつけてしばらくすると「あーあー」とか声を発したり、なにか聞いているような顔を見せたり。。と時がたつにつれ少しづつそういったことが増えていった。

聞こえと補聴器

彼の場合、平均聴力レベルは90dbで、補聴器をつけたときの聴力は50db程度になった。
なので
「補聴器をつけることが有効」だと言われた。

50dbはどんな感じかと言われれば(非常に大雑把だと思うけど)いわゆる耳の遠くなったお年寄りに大きめの声で耳元で話しかけたら音が届いているようなイメージなのだそうだ。

さらに詳しく書くと、250Hz程度の低い周波数の音は比較的拾えているが2000Hz以上の高音はあまり入っていないようだ。

ある程度音を補聴器で補えるとしても、
話し言葉については低い男の人の声か、高い女の人の声か。。と発せられる人の声の質によっても違うし
人の話し言葉は音域の幅が結構あって、
「あいうえお」の母音は低めの音域で、「さしすせそ」や「はひふへほ」は高めの音域なので
苦手な音域=彼の場合は高音が抜けて(高音が苦手な聴覚障害児は多い)聞こえているような状況だという。

「さしすせそ」や「はひふへほ」が文章の中から抜けて聞こえるとはどんな感じなのか。。。

(彼の場合は)補聴器をつけたからと言って単純にラジオのボリュームをアップしたような感じにはならない。
(難聴の種類によってはそういう人もいるが)

高音が入り、しかも必要ない雑音はカットできるようにと補聴器自体がその後何年にもわたり改良されてきたので、今は当時と比べ物にならない程かなり高性能になっている。

今は大きな声で話しかけたりなんかすると「うるさい!」と(本人に)怒られるが。

難聴のお年寄りの場合も同じだが、補聴器は本当に本人にあったものでないと本人にとってただのうっとおしいものになる。

音を拾いすぎると不必要な雑音まで拾うことになる。
良いころあいというのがあって赤ちゃんの場合は、その後どういう反応をしているかをじっくり観察していく必要がある。

慣れない補聴器

お耳の誕生日を迎えたのはいいが、慣れるまでは本人にとってはまだまだ「異物」のようだった。

補聴器が耳にしっかりと密着していれば問題はないのだが隙間が少しでも出来るとハウリングしてしまう。

聴力も高度難聴用なのでハウリングの音もピーピーかなりの音でこちらがイライラしてしまうほどの音だった。

遊ぶ時もおすわりがしっかり出来ていたのなら補聴器も定位置に収まるものだと思うが、
なにせ背骨の奇形の影響か、しっかりとおすわりが出来ていなく、ハイハイは出来なく、背ばい(あおむけで背中でハイハイ)で動いていたので
動くたびにピーピーと補聴器が外れてしまってなかなか慣れることができなかった。

それから一番怖かったのは補聴器の中に入っているボタン電池を飲み込んでしまうことだった。

乳児のボタン電池の誤飲に関しての記事があった。
ボタン電池の誤飲は特別警報レベル!?症状や対処法まとめ
胃や食道に穴が開いてしまうので即手術になるようだ。

2-3歳になるまでボタン電池の誤飲には神経を使った。

息子は電池を飲み込むことはなかったが、補聴器を口にくわえてしまうことはたまにあった。

ひとりで遊ばせていてもピーーとなったら息子の方に即注意を向けていた。

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